読書の秋。
「匂い」を感じさせてくれる本を紹介したいと思います。
秋、金木犀の香りを嗅ぐと思い出す本です。
主人公の女子高生が語り手になった、8編の物語。
どのお話にも匂いが効果的に表現されていますが、
一番記憶に残っているのが「Red Zone」という物語のこの一節。
「金もくせいの匂いがする
甘くて歯が痛くなりそう
秋には恋に落ちないって決めていたけど
もう先に歯が痛い
金もくせいを食べたの
金もくせいも食べたの
だから
歯の痛みにはキス」
山田詠美『放課後の音符』新潮社 P.107
鼻というより口に入ってくるような、金木犀の甘い甘い香り。
「甘くて歯が痛くなりそう」。なんてぴったりな表現。
この詩のようなことばを言った女性がまた素敵でした。
この本を読んだのは高校生の時でしたが、登場する女の子たちがいろんな意味でとても大人っぽく、どきどきしました。
今読み返してみると、恋愛だけでなく思春期の様々な気持ちや普遍的な悩みが鮮やかにすくいとられていて、だから読み継がれるんだろうなと感じます。
「匂い」と「香り」。
どちらも嗅覚への刺激を表す言葉です。
「香り」は、ここちよいと感じる場合に使い、
「匂い」は、鼻で感じるものすべてについて使います。
アロマでは植物の芳香成分を「香り」と表現することが多いですが、
本の中にはきれいなものだけでなく、生々しかったり泥臭いものも表現されていますね。
「匂い」から想像力を広げたり、記憶の扉を開いてみませんか?
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